外国人を採用して在留資格(いわゆる就労ビザ)の申請を行う際、企業が作成する書類のひとつに採用理由書があります(雇用理由書・採用経緯説明書など、名称は事務所や慣習によってさまざまです)。
採用理由書は、決まった様式がある書面ではありません。その一方で、申請書・雇用契約書(労働条件通知書)・会社資料など、複数の提出書類に散らばる情報をひとつの筋道として整理し、審査官に伝わる形にまとめる役割を担います。
具体的には、受入機関の事業内容と、申請人に担当させる職務内容、申請人の学歴・職歴(専門性)を結び付け、「この業務に従事させる理由が合理的であること」を説明するための書面です。
また、採用理由書は単なる事情説明にとどまらず、他の書類との整合性を明確に示す意味も持ちます。職務内容・所属部署・指揮命令系統・使用言語・処遇(報酬)などについて、書類間で読み取り方が分かれないよう、要点を明文化しておくことで、審査上の誤解や追加資料の要請を避けやすくなります。
本稿では、採用理由書の位置づけと、審査官に伝わる構成と注意点を解説します。なお、ここでは就労系在留資格のうち雇用契約等に基づき専門的業務に従事する類型(主に技術・人文知識・国際業務)を主な想定として解説します。
採用理由書とは
採用理由書とは、なぜその外国人を採用するのかを企業が文章で説明する書類です。具体的には、会社の事業内容、申請人の学歴・職歴、担当させる業務内容、そしてその三者が在留資格の要件を満たしていることを、審査官に向けて説明します。
法令上の位置づけ
提出は任意ですが、審査過程で追加資料として求められる場合もあるため 、職務内容や経歴との関係が書類から読み取りにくい案件では、補足資料として添付する運用が行われています。
採用理由書がないこと自体が直ちに不許可理由になるわけではありません。もっとも、提出書類が揃っていない申請の場合は、審査遅延や不利益処分となり得る可能性がある旨が案内されています 。職務内容や経歴との関係が読み取りにくい場合は、補足説明を加えることがあります。
特に次のようなケースでは、採用理由書による丁寧な説明が重要になりやすいです。
- 受入機関のカテゴリー(出入国在留管理庁の区分上、カテゴリー1・2に当たらないカテゴリー3・4の受入機関)は、事業実態・職務内容・学歴職歴との関連性をより丁寧に立証する必要が出やすい
- 外国人採用が初めての企業
- 申請人の専攻・職歴と担当業務の関連性が一見わかりにくい場合
- 留学生を新卒採用する場合
なお、カテゴリー1・2では提出書類が相対的に簡略化され、その他の資料は原則不要とされています。ただし、審査の過程で追加資料を求められる場合もあります。
採用理由書に記載すべき内容
採用理由書に法的に定められたフォーマットはありません。ただし、審査官が確認したいポイントは主に以下の事項です。
1. 書面の宛先・申請人の基本情報
冒頭に、宛先(法務大臣 殿)および申請人の氏名(ローマ字表記)、国籍、生年月日を記載します。採用理由書は様式自由ですが、申請書の建付けに合わせるのが一般的です。
2. 会社概要
会社の基本情報(商号・設立年・資本金・従業員数・事業内容)を簡潔に説明します。専門用語を使わず、審査官が業種・規模を把握できる書き方を心がけてください。複数の事業を展開している場合は、今回の採用がどの部門に関わるものかを明記します。
また、会社案内や登記簿は別途提出するため、概要説明は簡潔で構いません。重要なのは、どんな会社で、何をしているかが一段落で伝わることです。
3. 担当させる業務内容
申請人が実際に従事する業務を具体的に記載します。「営業補助」「事務全般」のような抽象的な記載では専門性が示せず、不許可につながる可能性が高まります。
- 具体的な作業内容(何をするのか)
- 使用する知識・スキル・言語
- 業務における位置づけ(どの部署で、誰と連携するか)
- 業務が会社にとってどのような役割を果たすか
良い例「ベトナム向け輸出事業における現地バイヤーとの契約交渉・通訳業務、社内資料のベトナム語翻訳・現地規制調査、および日越間の貿易書類の作成管理を担当する。」
悪い例「通訳・翻訳業務および営業事務全般を担当する。」
4. 申請人の学歴・職歴と業務の関連性
申請人の経歴(大学・専攻・職歴)と、担当業務の専門性がどのように結びついているかを説明します。ここが採用理由書の核心です。審査官は、在留資格の要件(学歴または実務経験)が業務内容に対応しているかを確認します。
たとえば次のように具体的に対応を示してください。
「申請人は○○大学経済学部を卒業後、現地の貿易商社において日越間の輸出入業務に5年間従事した経験を有しています。今回担当させる輸出業務・通訳業務は、この専門的な業務経験と直接関連するものです。」
なお、専攻と業務が一見かけ離れている場合(例:文系学部卒でIT系業務に就く場合など)は、その関連性を丁寧に補足説明することが重要です。
5. 採用に至った経緯・採用の必要性
「なぜ日本人ではなく、その外国人でなければならないのか」という観点で記載します。自社の事業拡大の状況、人材不足の背景、外国語・異文化対応の必要性など、採用の合理的な理由を説明してください。
採用プロセス(募集方法・選考方法)に触れると、採用の客観性を示すことができます。
6. 報酬・雇用条件
報酬額は、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上であることが上陸基準省令上求められています。単に最低賃金を上回っているだけでは、この同等報酬要件の説明にはなりません。職務内容・経験年数等に照らして合理的に説明できる水準として記載することが必要です。
給与が相場より低くなる場合(例:新卒採用で経験が浅い場合)は、その理由と根拠を補足しておくと審査がスムーズに進みます。
7. 入社後のサポート体制(任意)
必須ではありませんが、住居の提供・生活オリエンテーション・日本語研修などのサポート体制があれば記載しておくと、受入体制の整備を示すことができ、審査に好影響を与えることがあります。
8. 結びの一文
最後に、在留資格認定証明書(または在留資格変更許可)の交付を求める旨を記載して結びます。
書き方の注意点
分量はA4用紙1〜2枚を目安に
入管の審査官は多数の書類を読みます。簡潔・明確な記載が原則です。ただし、説明が複雑になるケース(専攻と業務のずれ、初めての外国人採用、過去に不許可歴がある場合など)では、説明を増やしてでも丁寧に記載するべきです。
他の書類と内容を一致させる
採用理由書に記載した業務内容・給与・雇用条件は、雇用契約書・労働条件通知書・申請書と必ず整合させてください。書類間で矛盾があると、審査が長引くか不許可につながることがあります。
テンプレートの丸写しは危険
ネット上のテンプレートをそのまま流用することはおすすめしません。入管の審査官は同様の書き回しに慣れており、自社の実情に合わせたカスタマイズがされていない書類は信頼性が低く見られます。会社固有の状況・採用背景・申請人の経歴を踏まえた記載が重要になりやすいです。
過去に不許可になった案件の再申請では
前回の不許可理由に答えた説明を記載することを推奨します。不許可理由への回答がない再申請は、同じ理由または「前回指摘への回答がない」として再び不許可になる可能性があります。
まとめ
採用理由書は入管法上の必須書類ではありませんが、就労ビザ申請において許可率を左右する重要な書類です。審査は原則として書面に基づいて行われるため、提出書類に書かれていないことは伝わりにくいという前提に立って作成することが非常に重要です。
今回の押さえるべきポイントは次の3点です。
- 業務内容を具体的に記述する
「何をするのか」「どの知識・スキルを使うのか」を明確に言語化する。 - 学歴・職歴と業務の関連性を示す
専攻・経験と担当業務の対応関係を、審査官が理解できるよう丁寧に説明する。 - 他の提出書類と内容を一致させる
雇用契約書・申請書と矛盾が生じないよう確認する。
在留資格の該当性は、職務内容・本人経歴・契約条件によって個別に判断されます。 具体的な申請については、専門家への相談をおすすめします。外国人雇用に詳しい行政書士をお探しの方は、こちらをご参照ください!
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